きょう、(小説 三好長慶)

近世のきのう、中世のあした。三好長慶の物語

2016-10-01から1日間の記事一覧

六 巣立ちの段  ――木沢長政 天分法華の乱を画策し、三好長慶 元服を果たす――

六 巣立ちの段 深山幽谷を行く。祖谷から芝生への帰路である。春の暖かさはまだ感じられないが、麗らかな日差しは皮膚の奥まで通り抜けていくようだ。求聞持法の行を終え、つるぎも供回りも、一行には朗らかな安心が溢れている。何ごとかを成したということ…

五 祈りの段  ――細川持隆 三好家を後援し、三好千熊丸 虚空蔵求聞持法に挑む――

五 祈りの段 元長の一周忌は、持隆にとっても溜飲が下がる思いであった。 手打ち式の守衛は通常、仲介人が行う。それにかこつけて元長を慕う人々を守備兵に紛らせ、石山本願寺の中へ埋伏させておいたのである。参列者の手配が直前になったのがかえってよかっ…