きょう、(小説 三好長慶)

近世のきのう、中世のあした。三好長慶の物語

2016-10-15から1日間の記事一覧

十八 悲恋の段  ――細川六郎 長慶家臣和田新五郎を成敗し、田中与四郎 大林宗套老師に覚悟を問われる――

十八 悲恋の段 雪月花の夜だった。 天文十三年(1544年)の春。ようやく桜の花が開いたと思ったら、季節外れの雪が降った。夜には雲が流されて、桜の老樹にまぶされた雪が月光をたおやかに反射している。 「まだいいじゃない」 半裸のまま、幹子が言った。新…