2016-11-07から1日間の記事一覧
三十五 ひとつの段 暦の上では秋だが、朽木では早くも雪が積もった。 さく、さくと足音が鳴る。義輝も藤孝も雪国の暮らしに慣れてきており、歩き損ねて転ぶようなことはない。その一方で、前を進む老人は何かがおかしかった。雪を踏む音が聞こえぬ。足跡もほ…
三十五 ひとつの段 暦の上では秋だが、朽木では早くも雪が積もった。 さく、さくと足音が鳴る。義輝も藤孝も雪国の暮らしに慣れてきており、歩き損ねて転ぶようなことはない。その一方で、前を進む老人は何かがおかしかった。雪を踏む音が聞こえぬ。足跡もほ…